《新連載》退院・退所カンファに利く 疾患の基礎知識

LIFEに翻弄される介護保険

<4月に行われた報酬改定について> 在宅4大サービスの集中減算は妥当か? 生活援助の多いケアプランは介護保険の理念に反しているか? 科学的介護で高齢者の生きる意欲、生活力が高まるか? 


退院・退所カンファに利く 疾患の基礎知識 2021/04/30

《新連載》退院・退所カンファに利く 疾患の基礎知識

 2021年度介護報酬改定では、居宅介護支援の「退院・退所加算」の算定要件として、「退院・退所後に福祉用具の貸与が見込まれる場合は、必要に応じ、福祉用具専門相談員や居宅サービスを提供する作業療法士等が参加する」が加わった。これを受けて、福祉用具専門相談員などが退院・退院カンファレンスに参加する機会もこれまで以上に増えることが予測される。

運動や感覚障がいの度合いを確認しよう

 本連載では、高齢者生活福祉研究所所長で理学療法士の加島守氏に、福祉用具専門相談員がカンファに参加する際に知っておくべき基礎知識や確認のポイントなどについて、疾患別に取り上げて解説いただく。初回のテーマは「脳血管疾患」。  厚生労働省の国民生活基礎調査(2019年)によると、脳血管疾患は要介護になる原因として認知症に次ぐ2番目(全体の16.1%)に多い疾患です。皆さんは脳血管疾患と聞いて、どのような後遺症や症状をイメージしますか。代表的な症状に「片マヒ」がありますが、脳血管疾患を聞いて、一様な「片マヒの利用者像」しか思い浮かばなければ、提案する支援や福祉用具も固定化されてしまう可能性があります。それでは一人ひとりの状態に沿った支援とはいえません。退院・退所カンファレンスは、その利用者の状態や症状の差を確認する絶好の機会です。そのために必要な知識やポイントを押さえていきましょう。

梗塞の6割を占める中大脳動脈

 今回覚えていただきたいのが「中大脳動脈」というフレーズです。脳の中で最も太い動脈で、そして最も詰まりやすい血管です。脳梗塞全体の6~7割を占めるともいわれているため、カンファでも耳にする機会が多いでしょう。

 中大脳動脈で梗塞が起こると▽手足の運動障害▽感覚障害▽失語▽失読▽失書▽失認▽失行▽同名半盲――などの症状が出現することがあります。動きや感覚ばかりでなく、話(失語)や読み書き(失読・失書)や計算ができなくなったりすることがあります。「失行」は、身体を動かすことはできるのに、一連の動作ができなかったり、動作の順序がわからないために「目的に合った動きができない状態」です。例えば、洋服の着脱ができない、歯ブラシに歯磨き粉を乗せて磨くことができない、などです。失行がある利用者では、身体が動くからといって、福祉用具を扱えるとは限らなくなってしまいますし、着脱しやすい衣服とともに介助者が声掛けでサポートするなど、在宅での支援もより工夫する必要があるかもしれません。

 実際のカンファレンスでは、医師らが手足の運動障害の度合いを軽度、中等度、重度と表現したり、感覚障害では「10分の〇」などと表現したりします。これは健側(障害されていない側)の感覚を10とした時の患側(障害がある側)の感覚の度合いを示します。10分の1ですと、健側が10を感じる場合に患側は1程度の感覚しかないことを指します。同じ片マヒでも10分の1と半分程度の10分の5では必要な福祉用具や環境整備もかなり変わってくるでしょう。適切な支援のために、必ず確認いただきたい内容です。

 退院カンファレンスに参加する目的は利用者の状態を知り、在宅での生活に必要なサポートに繋げることです。本連載もその一助になれば幸いです。次回も脳血管疾患の症状とそのポイントについて紹介します。

(かしま・まもる)

 1980年医療ソーシャルワーカーとして勤務後、理学療法士資格取得。越谷市立病院、武蔵野市立高齢者総合センター補助器具センター勤務を経て、2004年10月高齢者生活福祉研究所を設立し現職。 (シルバー産業新聞2021年4月10日号)

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